北風ふうちゃん。小学校の頃のクラスメート。
ちょっと変わった名前。
ほんとは、ふみこちゃん、だったかな。
さほど仲良しでも、抜群の美人でもなかったが、記憶に残ってる。
なぜか。
10代のころ、僕の耳元で、ささやく誰か、がいた。
ちょっとハスキーで、でも、語尾がやや高くなる声。
聞こえるか聞こえないか、ぎりぎりの小声。
僕だけにしか、聞こえない声。
その声の主が、まさに、北風さんだった。
北風さんの話し声と、同じ。
なぜ、北風さん?
北風さんに恋心?いやいや。別に。
大学に入って、同窓会があり、久しぶりに北風さんに再会。
せっかくなので、彼女に、
「なぜだかずっと、あなたの、ささやき声が、聞こえるんだ」
と伝えてみた。
クサい、ナンパみたいだな。
それから僕たちは、付き合いはじめて、やがて結ばれ、夫婦に・・・。
そんなことは、全然ない。
北風んさん「へ~」って言って終わり。
それから、ささやき声は、聞こえなくなったような気がする。
北風さんとは、それ以来、一度も会っていない。