学生時代、レンタルビデオ店でバイトをしてた。
常連のお客さんの一人に、向井さんがいた。
小柄な、白髪交じりのおじいちゃん。
向井さんは、いつもアダルトビデオを1本、じっくり選んで、陽気に借りていった。
向井さんが変わっていたのは、その日のスタッフ全員分の「ジュース代」を、置いていってくれること。
「今日は5人か。じゃあ、はい、500円ね」
レンタルビデオ代が330円だったから、ビデオ代よりもお金を使ってる。
もう1点、変わっていたのは、片手の指が、2本だったこと。
親指と中指。
店長いわく、向井さんは、元ヤクザだった、と。
何か事件があるたび、指が、1本、また1本、減っていったと。
引退前は、そこそこの地位にあったらしい。
「そこそこの地位」が、どんな地位なのかは、知らない。
僕の中では、優しい、気前のいいおじいちゃんだった。
今週のお題特別編「はてなブログ フォトコンテスト 2015夏」