LGBT。
僕が小学生の頃は、そんな言葉は無くて、女の子っぽい男は単にオカマと呼ばれてた。
小学生の頃、友達に、卓君がいた。
卓君は、頭が良くて、スポーツもできた。
目鼻立ちがくっきりして、身のこなしが優雅だった。
言葉づかいが、どことなく女の子ぽかった。
だから、というわけでもないけれど、僕たちは彼を、卓ちゃん、と呼んでいた。
卓ちゃんを快く思っていないクラスメートの一部は、陰で彼をオカマと呼んでいた。
おそらく、頭が良くて運動もできる彼に対するヒガミもあったんだろう。
卓ちゃんの家に、よく遊びに行った。
当時にしては珍しい、コンクリート打ちっぱなしの、こじゃれた家だった。
お父さんは、外国船の船長さんとかで、長い間、外国に行っていた。
家にいるのは、おばあちゃん、お母さん、妹、そして、卓ちゃん。
女性に囲まれているから、卓ちゃんは女の子ぽいのかな、と思った。
卓ちゃんの部屋のベッドで、布団をかぶって遊んでいたとき、卓ちゃんが「キスとかしたことある?」って。
当時、小学生。
もちろん、無い。
すると卓ちゃんが、「ちょっと練習しとく?」
ベッドの布団にもぐって、なんだか抱き合った体勢になって、せまってくる卓ちゃん。
ああ、もう少しで、唇が重なる!!・・・
ってときに、ふと我に返って、やっぱ、やめとこう、と。
マイ・ファースト・キスを卓ちゃんに捧げるところだった。
卓ちゃんとは同じ中学に進学したものの別のクラスになり、廊下であいさつするくらいの仲に。
その後、彼は県下NO1の高校に入学し、一浪して京都大学に合格した、とウワサで聞いた。
高校卒業後は、会っていない。
LGBTのニュースを聞くと、なんとなく卓ちゃんを思い出す。