取引先のSさん。巨額の詐欺に引っ掛かったとかで、どうにもならず、自己破産することにした、と連絡があったのが先月だったか。
その後、音沙汰無し。
「調子はどうです?」なんて聞くわけにもいかず、でも気にはなるので、隣町のS氏の事務所を訪ねてみた。アポなしで。
駐車場には車は無い。不在のようだ。
そして、今まであった駐車場の枠を指定する社名看板もない。
ああ、なんか予感が当たってるような気がする。
エレベータでオフィスの目の前に降りるのが何だかためらわれたので、階段を上がってみる。2階の他社の事務所はいつも通りだ。でも、踊り場から見える3階は、薄暗い。
自動ドアのガラス越しにオフィスの中をのぞく。からっぽだ。やっぱり。
むき出しになった配線跡や、水色のLANケーブルがどこか寂しげ。観葉植物が置いてあった場所には、まだ丸い植木鉢の跡が残っている。
こうなっているかも、となんとなく分かってはいたが、いざ目にすると、切ないな。
もうここに来ることも無いんだな、と柄にもなくおセンチになった。
帰ろう。