近くにテイクアウト専門の焼き鳥屋さんができた。食べてみたくなって電話で注文した。
夜7時。
歩いて受け取りに向かった。夕方はまだまだ暑くて、この夏は永遠に終わらないような気がしていたが、7時になると、少し暑さも和らいで、夕日に染まった雲を見ていると、ああ夏も終わりかけているんだなあ、と感じた。
ラジオでは、稲垣潤一の名曲「夏のクラクション」がよく流れるようになった。
”海沿いのカーブを君の白いクーペ 曲がれば夏も終わる・・”
夕日を見ながら、クーペなんか乗ったことないなあ・・・なんて思っていて、ふと思い出した。
乗ったこと、ある。
もう何十年前になるのか。
当時付き合っていた彼女の車。黒いセリカ。
正確には、彼女の兄貴の車だったが、兄貴は車を置いて他県に出向いていて、残された車を彼女が自由に使っていた。
僕はと言うと、自分のお気に入りの車を自損事故で廃車にしてしまい、しょうがなく、軽ワゴンに乗っていた。
彼女のセリカは、すごかった。いや別に、特殊なチューンしていた、とかではないんだが、2リッターのそのエンジンはトルクも太く、ちょっとアクセルを踏んだだけで、車体を想像以上に加速させた。
そのセリカで、何度かカーセックスをした。
しかし、本当にしたのかどうか、今になっては思い出せない。
何しろ、すごく、狭い。
バケットシートは動きづらく、まったく体の自由がきかない。
リアシートもあったが、ほんの飾り程度のもの。役に立たない。
その中で、あれやこれや試行錯誤したが、彼女の、
「・・・・ねえ、この車だと、ちょっと無理じゃない?」
って言う言葉だけを覚えている。